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GENPACを使用したバイオマーカーの探索

GENPACの活用事例として、患者および健常者の血液サンプル間で有意差(p < 0.001)が認められた大量の遺伝子リストの中から、バイオマーカーの候補となるタンパク質の絞り込みを行った例をご紹介します。

イントロダクション

疾病メカニズムの解明や疾患関連マーカー(バイオマーカー)の探索は、生体から採取した試料の遺伝子発現量をDNAマイクロアレイにより測定したり、タンパク質の存在量を質量分析により分離定量した結果を用いて行われます。DNAマイクロアレイでは、試料でどのような遺伝子が相対的にどれだけ発現しているのかがわかります。質量分析では、得られたマススペクトルをタンパク質検索エンジンで検索することにより試料に含まれるタンパク質・ペプチドが同定され、マススペクトルの信号強度から各タンパク質・ペプチドが定量されます。こうして得られた疾病の有無による遺伝子の発現量・タンパク質の存在量の差から疾患試料特有のバイオマーカーが得られます。

今回の事例では、転移性乳がん患者と、非転移性乳がん患者および健常者のサンプル間で有意差(p < 0.001)が認められた124個の遺伝子のリストから、特定の生物学的機能(今回の例では血管新生)と関連の強い遺伝子を、GENPACを使用して抽出しました。

作業手順

1. バイオマーカーの候補を探索する遺伝子リストの用意

ここではマイクロアレイデータを解析して得られた123個の遺伝子をEntrezGeneのGeneIDで表記したリストを用意しました。

2. 機能既知の遺伝子リストの用意

ここではUniprotを用いて、Keyword: Angiogenesisに分類されるヒトタンパク質42個のリスト(GeneList02)を取得しました。

3. GENPACを用いた遺伝子間の相互作用情報の検索

GENPACを用いて、転移性乳がん患者と、非転移性乳がん患者および健常者のサンプル間で発現量に有意差の認められた123個の遺伝子(GeneList01)と“Angiogenesis”に分類される42個のタンパク質(GeneList02)の相互作用を検索します。

機能既知のタンパク質情報を用いたタンパク質リストの機能評価の概念図

機能評価の対象の遺伝子群(GeneList01)の中から直接あるいは中間遺伝子を介して間接的に機能既知の遺伝子群(GeneList02)と相互作用する遺伝子(GeneList01の中で青でマーキングしたタンパク質)を抽出します。抽出された遺伝子はGeneList02と相互作用することから、GeneList02の機能に関連している可能性が高いと考えられます。

GENPACには、単独の遺伝子の相互作用情報を検索するためのGENPACと複数の遺伝子の相互作用情報を検索するためのGENPAC Batchがあります。今回の事例では複数の遺伝子の相互作用情報を検索するため、GENPAC Batchを使用します。

GENPAC BatchでGeneList01、GeneList02の2つの遺伝子リストの関係検索を行います(参考:「How to use GENPAC 応用編2 遺伝子リストを用いた検索」をご覧ください)。

4. Cytoscapeを用いた相互作用情報の可視化

検索結果をCytoscapeで重ね合わせ、可視化します(参考:「How to use GENPAC 基礎編」後半のCytoscapeによるネットワーク表示をご覧ください)。

結果

  • GeneList01の中に、既知の血管新生関連遺伝子はありませんでした。
  • GeneList01の中に、中間ノードを介してGeneList02と相互作用する遺伝子が32個見つかりました。これら32個の遺伝子の中に、血管新生と関係がある遺伝子が存在することが期待されます。

以上のように、124個の遺伝子リストから血管新生に関係すると思われる32個の遺伝子、すなわちバイオマーカー候補を効率的に抽出することができました。

結論

GENPACを使用することで、ユーザーはマイクロアレイや質量分析の大量な実験データから、関心のある機能既知の遺伝子リスト(例:Angiogenesis, Cell cycle Arrest, Cell Adhesion, Fibrinolysis, Extracellular Matrix)と相互作用を持つ遺伝子・タンパク質を抽出することができます。これは、文献からの生物学的機能情報を用いてバイオマーカー候補を絞り込むことに相当します。